個人事業主の法人化
節税効果と事業の発展を考えるなら法人化しましょう!
個人で事業を行っている方なら、誰もが「そろそろうちも法人化した方がいいかなあ?」と悩まれたことがあると思いますが、法人化した方が良いのか悪いのか?税金や社会保険などコスト的にはどうなのか?判断に迷うところです。
そこで、個人事業主の法人化のメリット・デメリットについて整理してみましょう。
法人化のメリットとは
個人事業主の方が法人化することで得られるメリットは、大きく分けて
- 節税効果が高いこと
- 社会的信用度が高いこと
- 資金調達面で有利なことです
メリット1 節税効果が高い
1.一定以上の所得があれば個人よりも税金を少なくできる
- 税率の違い
個人事業と法人にかかる代表的な税金と言えば、個人の場合は所得税、法人の場合は法人税になりますが、それぞれ、所得に応じて税率が異なります。
個人事業(所得税)の最高税率は40%、法人(法人税)の最高税率は30%ですから、個人の方で所得が900万円を超えると、税率的には法人の方が通利となります。
※尚、所得とは、「収入から必要経費を差し引いた額」で、売上とは異なりますのでご注意下さい。
個人事業の課税所得に対する税率 法人事業の課税所得に対する税率 年間所得金額 所得税率 年間所得金額 法人税率 195万円以下 5% 800万円以下 22% 195万円超〜330万円以下の部分 10% 330万円超〜695万円以下の部分 20% 695万円超〜900万円以下の部分 23% 800万超の部分 30% 900万円超〜1,800万円以下の部分 33% 1,800万円超の部分 40% - 事業主の給料も経費にできる
個人事業の場合は、売上から認められた経費を引いた残りが全て課税所得となってしまいますが、法人の場合は、社長の給料(役員報酬)も経費になりますし、社長の給料にも給与所得控除(経費)が認められますので、法人全体にかかる課税所得は大きく下げることができます。
ですので、(1)>(2)+(3) なら法人化の方が得ということなります。
実際に法人化した方が良いのかどうかは、ご相談いただければその場で試算いたしますので、お気軽にご相談下さい。相談は無です。
2.経費として認められるものが増える
法人 | 個人 | |
---|---|---|
役員報酬 | 毎月定額で受け取ることができ、給与所得控除が使える | 役員報酬自体がない |
退職金 | 適正と認められれば、経費にすることができる | 事業主や専従者の退職金は経費にならない |
生命保険 | 一定のものは保険の種類によって経費になる | 事業主及びその家族を被保険者とするものは経費にならない 但し、生命保険控除はあり(最大10万円) |
交際費 | 資本金1億円以下の場合、上限は年間800万円まで認められる | 妥当性があれば経費として認められる |
日当 | 予め設定し、妥当性があれば認められる | 旅費規程がないので、認められない |
上記は代表的な例ですが、一般的に経費として認められる幅は個人よりも法人の方が多いと言えます。
3.赤字の繰り越しが認められる期間が長い
青色申告の場合、個人でも赤字の繰り越しが認められますが、個人事業の場合は繰り越し期間が3年間のみに対し、法人の場合は、9年間繰り越して控除することが可能です。
4.法人には相続税がかからない
個人事業の場合、個人事業主の財産すべてに相続税がかかりますが、法人の場合、会社として保有する資産には税金がかかりませんので、法人として財産を留保することで、財産を保全することができます。
メリット2 信用力が高い
1.人材の採用
従業員を採用する際に、法人の方が印象がよく、また社会保険に加入している場合は更に採用面で有利となります。
2.取引先の制限が少ない
大手企業などによっては、個人事業主とは取引をしないという会社も存在しますので、法人化することで、取引できる相手先が広がります。
また、法人のほうが相手に与える印象が良いため、営業活動しやすなどのメリットもあります。
メリット3 資金調達の幅も広い
金融機関から融資を受ける際、創業後であれば、個人事業主よりも法人の方が融資を受けやすいようです。
よく、創業する際にも「法人の方が融資を受けやすい」と言われているようですが、創業時はたとえ個人でも法人でも、新規事業がどうなるかはわかりませんので、金融機関からみた場合の信用に大差はありません。むしろ、創業前は、新規事業の中身と経営者の信用のようです。
しかしながら、創業後は別です。理由はいくつかありますが
1.決算書に信頼性がある
法人の決算書は、個人の青色申告書に比べると格段に詳細ですし、基本的に税理士が作成していますので、信ぴょう性が高いと言えます。
対する個人事業の場合は、確定申告を自分で行っているケースも多いので、内容の信頼性はそれだけ劣ると言わざるを得ません。
2.第三者保証人等を不要とする融資を受けやすい
「第三者保証人等を不要とする融資」とは具体的に、日本政策金融公庫等の融資を指しますが、個人事業主からの法人成りをした場合、
- 税務申告を2期以上行っていること
- 所得税等を期限内に完納していること
- 最近の業績等から第三者保証人や担保がなくても融資できると認められること
のいずれかが認められることで、「第三者保証人等を不要とする融資」制度を利用できる確率が高まります。
法人化のデメリット
デメリット1 事業を維持するコストが高いこと
1.赤字でも毎年約7万円の法人住民税の均等割が発生する
個人事業主の場合は、利益がでなければ所得税以外税金はかかりませんが、法人の場合は、仮に赤字でも、法人住民税の均等割として毎年約7万円は払わなくてはなりません。
2.社会保険の加入が義務付けられる
個人事業主は、国民健康保険と国民年金に加入していれば問題ありませんが、法人の場合、従業員を雇用した場合は、健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられます。
デメリット2 会社設立・事業の廃止にお金がかかる
個人事業の場合は、開業・廃業も必要書類を提出するだけですが、法人の場合、会社設立時の設立登記・事業を廃止する際の解散登記・清算結了登記が必要となり、会社設立・事業の廃止にもお金がかかります。
デメリット3 決算申告が自分では困難
個人事業主の青色申告は簡単なため、自分でも行うことができます、わからなければ税務署でも書き方を教えてもらえます。しかしながら、法人の場合、申告書を自分で作成することはよほどの専門知識がなければ困難ですし、税務署でも税理士に聞くように指導されますので、自分では申告できないと思った方が良いでしょう。
このように、法人化する面ではそれぞれにメリット・デメリットはありますが、高い事業意欲を持ち、事業を発展して行こうと考えるならば法人化することをお薦めします。
ただ、まだその段階ではないのに焦って法人化する必要はありませんので、一度、法人化するタイミングかどうか相談されることをお薦めします。
ご相談いただければその場で法人化すべきかどうかお答えいたしますので、お気軽にご相談下さい。